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2001年01月10日

硝子の箱 [ 現代小説 | 短編 ]

テラ著 【夢乃欠片 現乃一片

 感想を言葉にするのがものすごく難しい。――たぶん、私自身が未だに思春期の殻をお尻にくっ付けたまま生きているからじゃないかとも思う。読者が思春期か思春期ではないか、男性か女性かによってもこの作品の印象は変わってしまうのではないだろうか。ベストでジャストな読者は思春期真っ只中を過ぎた当たりのどちらかというと内省型の女性、という印象がする。

 読み終えた後、私はふと思い出した歌詞があった。エリック・クラプトンの「TEARS IN HEAVEN」――どのアルバムに入っているかまではちょっと分らない。私の手元にあるのはグレゴリアンチャントに編曲したものだから。
 英文の歌詞を抜粋するのも無粋(作詞者の名前がわからないので、著作権の問題があるし)なので、私自身の手で訳してみる。

  天国であなたを見つけたら
  私の名前を忘れずにいてくれるだろうか
  天国であなたを見つけたら
  あなたは変わらぬままでいてくれるだろうか
  私は強く耐えぬいて
  生きていくのだ
  天国にはまだ
  私の居場所がないから

  天国であなたを見つけたら
  私の手を握ってくれるだろうか
  天国であなたを見つけたら
  立ち上がる私に手を貸してくれるだろうか
  いつの日か私は
  自分の道を見つけるのだ
  天国にはまだ
  留まるわけにはいかないから

  時は人を悲しませ
  時は人を平伏させ
  時は人を傷つける
  そして人を希わせる
  乞い求めさせる

  扉の先には
  きっと平安がある
  それを手に入れたときに
  天国にはもう哀しみはない
            ――「TEARS IN HEAVEN」


 この作品は下手に感想を書くと致命的なネタばれをしてしまいそうで、かと言って抽象的な言葉ばかりを書いても感想として意味をなさないので、そういう意味でも難しい。(書き難いのなら諦めればいいのだが、良いと感じた作品なのでそれだと悔しいから頑張ってみる/笑)

 人は悲しみの中にいるとき、現実感を無くすことがある。ことにその悲しみが唐突であればあるほど。私自身、まだ大学に入る前に外祖父を亡くした時、現実との剥離感をいやと言うほど味わった思い出がある。私はその時、予備校の寮に入っていたのだが、話を聞いて駆けつけたとき、私は自分の力でJRの特急券を買う事が出来なかった。何処でどう言えば買えるのか、それが分らなくなってしまったのだ。一つ一つの行動をするために自分の行動を確かめ、その確かめすら時にはどこまで確かめたか分らなくなった。悲嘆とはそういうものだ。その時の私には、まだその悲嘆を受け止めるだけの強さは備わってはいなかった。(半年前、祖父の危篤の知らせを受けて、JRとタクシーと飛行機を乗り継いで実家に帰ったとき、奇妙なほど冷静で物事をこなしていく自分が不思議なほどだった。多分、これは私が自分の足で社会を渡っていくようになったための成長という名の変化だったのだろう――いま思っても、その後の葬儀が終わり親戚を全員送り出してしまうまでの私自身は、信じられないほど気丈だった。その後、過労で倒れたけれども/笑)

 この『悲嘆』に覚えのある方は非常に明解にこの作品を読み取っていけるのではないかと思う。反面、共感し得ない人にとってはこの作品は不思議なほど美しい、捉えどころがないようで確実に精神に染みとおる水のような印象を受けるだろう。
 この作品は確かに小説なのだけれども、読後のイメージは非常に詩を読んだ後に似ている。読み解くのではなく、感じ取って欲しいと願う作品だと思う。文章も詩的で幻想的だ。そのせいで現実感は削がれてしまっている印象もするけれども、変に現実的に冷めて書かれるよりも詩的である事でテーマを美しく鮮やかに描き出せているように感じる。
 とても私が好きなタイプの話なので、読んでいて、幸せだった。

 私的ツボ度:★★★☆☆

Posted by 風間 : 2001年01月10日 00:00 | トラックバック