2000年12月28日
月下残影 [ ファンタジー | 長編 ]
琴乃 つむぎ著 【THE GREAT GAME 言紡師の書斎】
時間が出来しだい読むと自分に約束していた作品である。(笑)
拙宅に設置してあるこっそり隠したお絵かき掲示板に、「TEAR DROP.」のzero-zeroさまがこの作品の主人公である「ミルイヒ」の肖像を描かれた際に「オンライン小説界一根暗な主人公」と書かれていたが、なるほど、確かにそうかも知れないと思わせられる部分があった。その際に「ダメ男ちゃん」なのだと作者ご本人が言われていたが、確かにそれも頷けた。(笑)
舞台背景は中世〜近世的だが、その時代感を押し付けるような不用意な舞台描写等はなく、文体は比較的軽めなので、多くの方に愛される作品なのではないだろうかと思う。ジャンルは――恋愛…とはちょっと違うような気もするが、メインで語られるのは恋の心の動きと駆け引きである。
恋愛モノという一括りの中に入れるには、それ以外の剣技等のアクションシーンが冴えているので、自分としては少し軽めの中世アクションをベースに恋(愛ではない)が語られる話、というジャンルを作って納めたい感じだ。(こんなジャンルを作っていたら世界は膨大なジャンルで埋め尽くされるだろうな/笑)
小説の感想を書く前に是非とも最初に言っておきたいこと。
このサイトで小説を読んだら、他のサイトの管理者がどれだけ「見せる」とうことにこだわっていないかが分ります。(ある意味、うちのなんて最悪かもしれん/笑)
とにかく読みやすい。オンラインではこの「読みやすさ」というのも重要なファクターの一つだと思う。単にモニターに向かっているだけでも目は疲れるが、更に追い討ちをかけるように見難いほどの小文字や行間は使うべきではないのだよね。(←…耳が痛い/笑)
さて、(ようやく)感想に移ろう。
恋愛のじれったさというものをほとんど知らない私(別に恋愛経験がなかった訳ではない。事実ちゃんと私には旦那が居る。単に私の性格的な問題なのである)なので、なんだか読んでいて、不思議な感動を覚えた。そうか、恋愛ってじれったいものだったんだと、いうある意味当たり前なことなのだが、私にとってはしばらく忘れていたことを思い出したような気がしたのだ。
でも、もしかしたらこの作品は恋愛を中心にしないほうがもしかしたらもっと面白かったのかもしれないと思う。アクションが冴えているからだ。(あとで作者の好きな小説の中に「三銃士」と「燃えよ剣」があるのを発見して妙に納得した)そして、恋愛小説としては、その恋愛に重要であろうお互いの印象に対する説明が詳細なのだが、どこか足りないように感じられてならなかったのだ。描写はされているのだが、動機が弱い印象が拭えなかった。(私は運命的な、お互いにだけ感じられる相手の本質なんてモノを信じる事が出来ない、現実主義者なのであろう;)逆に、冴えたアクションを縦軸にし、その箸休めとして恋愛を描いた方が、文章の勢いにも似合っていたような気がする。
他の方から寄せられている感想を見ると、多くの方が恋愛方面に注目されているが、この作品は主人公の恋愛と「切り裂き魔」との戦い(というか追跡というか)が二つの軸になっていて、この二つの問題を経て主人公が成長する話のように私には感じられた。単に恋愛の過程を楽しむのではなくて、それによってどう変化していくのかという話だ。
私は恋愛は闘争だと思っている。(そんなことを思っているから、じれったさを微塵も感じないのだ/笑)
闘争というものは勝たねば意味がないものではない。勝たねば意味がないのは勝負の話である。闘争はその過程から生じる自己の変革が重要な問題なのであって、その結果としての勝利にはそこまで重要性はない。実際、変化のためには負けたほうがいい事だって、世の中にはたくさんあるのだ。
主人公はこの二つの闘争の中に居る。そして、ある接点でこの二つの闘争が繋がる。――そう、繋がってしまうのだ。
私にはこれが勿体無いように感じられてならなかった。
アクションシーンは冴えている。好きだ。キャラクターの心情も滑らかに描かれていてとても分りやすい。作者は本質的にはコメディタッチの人なのかもしれないなと思ったのだが、流れる文体の中で突然タッチが変わることがあるので、シリアスに読み進めたい場合は注意が必要かもしれない。私はこれくらいの遊びは好きだけれども。
そういえば、この作品の番外編も読みたくて質問事項に全問正解したのだが、何故かページに進めなかった。(パスワードがかけられているのだ)――なんだかちょっと切なかった。(T-T)<後日、読めました^^
私的ツボ度:★★★☆☆
Posted by 風間 : 2000年12月28日 00:00 | トラックバック